缶サット甲子園2015 大会講評

「理数が楽しくなる教育」実行委員会 会長 土岐 仁



今回で第8回となる缶サット甲子園はスポンサーの支援が全くない等の運営上の問題もあり, 全国大会開催の決定が遅れ,皆様に大変ご迷惑をおかけしましたが,缶サット甲子園2015 全国大会は各地方大会を勝ち抜いた代表校全10校の参加の下,盛会のうちに終えることができ ました.厚く御礼申し上げます.

全国大会は秋田大学理工学部創造生産工学コースが運営主体となり,学生や一般社会人の ボランティア参加によるご協力の下,秋田市太平山自然学習センター「まんたらめ」及び太平 山スキー場「オーパス」で実施いたしました. 打ち上げ開始直前に突然の通り雨に見舞われた ものの,薄日が差す微風の条件の下,順調に打ち上げが行われました.プレゼンも含め,全体 を通して大会はスケジュール通りに行うことができました.皆様のご協力に感謝申しあげます.

 

缶サット甲子園は高校生自らがミッションを設定し,その達成に向けて生徒自身が主体的に取り組む 課程を,ミッション概要資料,事前プレゼン,実競技,事後プレゼンの4つによって評価しますが, ミッションの目的,意義に対して,いかにそれを確実に実現できるかが重要になってきます.

 

優勝した唐津東高校は,「分離型缶サット」を提唱し,親機は主として子機の撮影と各種センサ によるデータ取得,子機は親機の撮影を行い,互いの位置関係や機体の様子を確認することで本物 の人工衛星のトラブルの早期発見にもつながる技術の基礎という位置づけとしている.また,これら のデータ取得や画像を用いて,子ども達に対するアウトリーチ活動の中で,缶サットでどのような ことができるのか具体的に紹介することに使いたいと考えている.サクセス項目とその検証方法を 明確にし,それに沿ってデータの検証を行っていること,プロジェクトの達成度が高いこと,わかり やすい結果の提示とそれらの的確な物理解釈を行っており,説得力のあるプレゼンを行っていたこと 等は,各校の参考になるのではないでしょうか.

 

準優勝の和歌山桐蔭高校は,「安全性の向上」を掲げ,「遠心ファン式エアバッグ」を開発し, この導入に伴う缶サット本体の回転の打ち消しやデータのリアルタイムグラフ化,さらには缶サット の落下の様子の3D再現等をオリジナルソフトを開発して実施していること,全体重量の大幅な軽量化 を実現していること等,高い技術力が評価されました.

東工大附属高校は,缶サットの円錐振り子のような公転運動を,機体の自転により缶サットの姿勢を 安定させ(スピン安定),公転運動をキャンセルしようとするミッションに挑戦しました.姿勢安定を 示すことはできませんでしたがアイディア賞を受賞しました.

 

今回大幅なレギュレーションの変更を行いました.従来のレギュレーションを維持するためには大型 モデルロケットを使用せねばならず,大幅なコスト増となるためです.具体的には最大重量300g,缶サット 本体を350ml缶サイズとしました.このため高校生がどのようなミッションに挑戦できるのか心配しており ましたが,杞憂であり,大変質の高いミッションに感心しました.その反面,単なるデータ取得に留まる ことや,ミッションの目的・意義に関して希薄であること,ミッション概要資料におざなりな点が見られる こと等は大変残念に思います.また,全体として缶サットの構造がお粗末であり,トラブルの元になったり, データの取得が不可能になった場合がありました.しっかりとした構造は基本中の基本です.

 

毎回述べることになりますが注意点を昨年同様再掲しておきます.

  1. ミッションの目的・意義について,単にセンサにより計測することが目的ではなく,何のためにそのミッションを行うのかを十分に検討して欲しい.
  2. センサによる測定は,確実に測定でき,かつその値が正しい値であることをまず確認すること.
  3. センサには規格があり,測定範囲,精度,動特性等が測定したい物理現象にふさわしいものであるかを十分に吟味すること.
  4. 事前に十分な実験をしておくこと.缶サットの降下実験を行わなくても,実験室内でできる実験はたくさんある.
  5. データの取得も動画撮影も缶サットの安定した降下が実現できて初めて意味がある.
  6. データの物理解釈を十分検討すること.
  7. ミッション概要資料は自分たちの取り組みを伝えることができる重要書類である.
  8. しっかりとした缶サットの構造があって初めてミッションに挑戦ができる.

缶サット甲子園2015全国大会の実施に際してご協力いただいた全ての方々に心より御礼申し上げます.

次回も高校生たちの素晴らしい取り組みに会えることを楽しみにしております.